可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
ふよふよ浮かぶエリアーナに連れられて森をしばらく歩き、ベアトリスがたどり着いたのは聖堂のような建物だった。
室内はだだっ広いホールで、窓が一つもなくて昼でも中はまっ暗だ。
エリアーナはずんずん奥に進んでいくが灯りをつけない。エリアーナのピンクのウサギ眼は夜目が効くのだ。
ベアトリスは暗いホールに一歩入っただけで、それ以上中には進まなかった。出口はすぐ後ろだ。
「真っ暗ですわね。ここは何をする場所なのですか?」
「葬送パーティする場所やな」
「葬送パーティ?」
「美味しいもんいっぱい食べて死んだ奴の周りで踊り狂う儀式や。
楽しいで?まあ種族でやり方もまちまちで、死んだ奴を食う種族もおる」
魔族には神を崇める習慣もなければ、葬儀の方法も全く違うようだ。
「この場所は死の儀式をする場所だとは、わかりました。
ですが、こんな場所に魔王様はいらっしゃいませんよね?」
ホールの中央に進んだエリアーナが振り返り、ニヤァっと厭らしさ満載の悪人顔で笑う。