可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「ニャ!」
ベアトリスの視界に、アイニャを抱っこしたジンが現れた。
いつの間にか、木々に囲まれた葬送会場の外だった。
「へ?」
アイニャが地面にペタンと座っているベアトリスの膝に飛び乗ると、膝に愛しい重みが乗った。手足の感覚が戻って来る。
ベアトリスの前に膝をついたジンがベアトリスの前で手の平を振った。
「君の名前はわかるか?」
「ベアトリスです」
「意識ははっきりしているね。魔族でも半日で狂う闇地獄で自分を失わないとは、君はなかなかタフだよ?」
「ニャ」
アイニャがベアトリスの頬をペロリと舐めると闇から抜け出したのだと実感が湧いてきた。
ベアトリスはアイニャを抱きしめてため息をついた。
「あー会いたかったにゃーアイニャー」
「ニャ」
「私を無視しないで欲しいにゃ」
ジンがまたにゃん語を使うので、ベアトリスはクリスタルブルーの瞳を大きく見開いてジンを見た。ジンはクスクス笑って自分もベアトリスの隣に腰を下ろす。
「君は本当に泣かないな。闇地獄は楽しかったのかい?」