可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「僕はエリアーナのそういう根性を買っている」
「先生、まだ手伝ってくれる?」
「もちろん。僕の可愛い弟子の頼みだ」
「先生大好きや!」
立ち上がったエリアーナに力いっぱいむぎゅっと抱きしめられると、サイラスは宙に浮いてしまう。
(胸圧、最高!!)
エリアーナに存分に抱きしめられたサイラスは、地に足のつかないふわふわな状態で、次の手を述べた。
「敵の情報収集をする。これは難しいから、僕がやろう。少し待っててエリアーナ」
「はい!先生、うち、ええ子で待てるで!」
「エリアーナは誰よりイイ子だ」
エリアーナは待ての指示中、良い子にする案を持っていた。
「先生、最近城の周りに魔狼が増えてるの知ってる?」
うさ耳がぴょんと復活して立ち上がり、サイラスの目線に会わせてエリアーナが屈むと胸の谷間が大公開だ。
サイラスの黄緑色の目が欲でピンクに染まる。
だが声色に全く変化を出さないのがサイラスの賢者スキルである。
「報告は受けてる。規定区から勝手に出てきて……雑食で気が荒くて、言葉も通じないから好きな連中ではない」
「うちもアイツら好きではないけど、追いかけ回すのはおもろいねん。待ってる間に巣の場所探して、遊んできてもええ?」
「ケガしないように」
「任せといて!」
無垢に笑うエリアーナも大好きだ。
だが、エリアーナが悪いことしてヒャッハーしている姿を、サイラスは何度でもおかわりしたい。
(次は生贄姫の弱点でも突いてみようか)
エリアーナの悪事ヒャッハー対象で、初代魔王様の加護の研究対象でもある生贄姫は、今のところサイラスにとって非常に有用な存在だといえる。