可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
ジンに封印から助けてもらったあの日から、ベアトリスは週に一度ほどジンの部屋を訪れて「仲良く」お話するようになっていた。
ジンは快く迎えてくれて、得体のしれない真っ赤な生き血ジュースを振舞ってくれる。
ベアトリスはもてなしで出される果物は口にするが、赤いジュースは一滴も飲んだことがない。食文化の違いだ。
ジンに今日は「もう一人、茶会に招いてあるんだ」と告げられた次の瞬間、彼はやって来た。彼の見た目は人間でいう子どもだ。ジンが彼を紹介してくれる。
「ベアトリス、彼はサイラス」
ベアトリスは一瞬きょとんとしたが、魔国でしばらく身を置いているので、魔族の見た目と年齢が一致しないことも学んでいた。
「ごきげんよう、サイラス様。人間国から来ましたベアトリスと申します」
入室したサイラスにベアトリスは人間貴族の礼を尽くして挨拶した。サイラスは肩を竦めて仕方ない感を盛大に醸し出してから、しぶしぶ返事をした。