可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─



「サイラスだ。ジンの側近と医師や研究をやっている」

「まあ、肩書を聞くからに聡明なのが伝わって参りますわ」



にこりと外行きの笑顔を見せるベアトリスに、サイラスの警戒は取れない。長く生きてはいるが、どうしても人間は好かない。


魔族は大概がアホ可愛い。だが、人間は狡猾だ。笑顔で裏切るのが大得意。同族嫌悪である。



「挨拶も済んだ。三人で仲良くお話しようじゃないか?」

「いい考えですわ」

「はぁ、くだらない。僕はもう帰る」

「座れサイラス。命令だ」


サイラスがピクリと眉を上げた。サイラスに対して、ジンはめったに命令など使わない。だが、小さい体で誰より偉そうにしているサイラスといえども魔王様の命令には従う。


魔王は魔国の最高権力者であり、純粋に一番強い魔族だ。超個人主義の魔族をまとめるジンはこの国で誰より強い。


強いものに従う。賢者サイラスといえど、例外ではない。

  
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