可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


「最高だね、君は」


惚れた腫れたで揉めているところに可愛くてごめんねと謝ってしまったベアトリスは


傷口に塩どころか、傷口をナイフで抉ったようなものである。ジンはケラケラ笑った。


人間でも魔族でも恋情のもつれは美味しいと、サイラスは生き血ジュースを口に含んだ。


恋情のドロドロ話なら、サイラスは割と好きだ。


「ハタ迷惑な好意のおかげで義姉にさらに恨まれたあげく、復讐として魔王様の生贄姫に推薦されました」

「まさに災難だ」

「おい、サイラスどういう意味」

「人間国に帰ってきたら、チビデブハゲ糞エロ変態伯爵と結婚させてやると呪いかけられてここに来たのです」

「行くも地獄、帰るも地獄なわけだ」


サイラスの言葉に、ジンが腕を組んで心外だと言わんばかりの顔をする。


チビデブハゲ糞エロ汚い伯爵の嫁になるか、

500歳年上の細胞好き異常性癖の魔王の嫁になるか。


どちらにしても惨い選択だったなとこのサイラスでも、ベアトリスの事情に多少同情してしまった。


< 61 / 232 >

この作品をシェア

pagetop