可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
賢者サイラスの脳で極度に再現度の高い妄想エリアーナが完成した。そのせいで、余計にサイラスのエリアーナに会いたい欲が高まってしまった。
このどうでもよい茶番から早く下りたい。
魔族でないベアトリスは気づかないが、魔王の尖った耳がピクピク動くのは性欲の現れだ。
可愛い、大好き、抱きたいの意思表示だ。
ジンは尖った耳が勝手に動いていることなど知らないだろうが、教えてやる義理もない。細胞との恋を応援する気もない。
魔王の正式な王妃となるのは
強者と決まっている。
人間ごときが座れる王座ではない。ジンがいくら血迷って細胞に懸想してもそれは変わらない。
これが魔国のご意見番、賢者サイラスの回答だ。
夜の生き血ジュース茶会は終わり、ジンは御丁寧にベアトリスを部屋まで送って行った。二人の背中を見送ったサイラスは無情に次のターゲットを決めた。
「おじい様ゆかりの『金のロッド』だな」
またエリアーナの可愛いヒャッハー顔が見れると思うと、サイラスはニヤつく口元を抑えきれない。
大切なモノにまで初代魔王様の加護が適応されるのかも、見ものである。