可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
金色の波打った豊かな髪の毛をベッドに広げたベアトリスは、お腹の上の黒猫アイニャの背を優しく撫ぜてクスリと思い出し笑いをした。
「アイニャ、魔王様ね。500歳も年上って聞いていたから、どんなにヨボヨボのおじいさんかと思ったら、すごく綺麗な顔をしておられたのよ?」
アイニャは喉をごろごろ鳴らして、一人で話し続けるベアトリスの話を聞いているようだった。
「あまりに綺麗で驚いてしまったわ。シワシワだったおじい様とは大違いだったの」
「ニャ」
アイニャは何もわからないのに、タイミングよく返事をしてくれる。そういうところがツボなのだ。
ベアトリスはアイニャを撫でて、もう片方の手で自らの首に吊り下げた金のロッドを握り締めた。
アイニャと金のロッドにだけ、ベアトリスは心を語る。
「拝啓、おじい様!
ベアトリスはおじい様よりずーっと年上の男性と結婚してしまいました。
でも、おじい様が望んだとおり
強く生きて、幸せになりますわ!」
ベアトリスは愛するおじい様への報告を終えてアイニャを抱きしめる。冷たい石造りの壁に囲まれていても二人でくっついて温かく眠った。