可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
愛しの愛猫
「あれ?ここに置いたはずなのに」
風呂で美に磨きをかけたベアトリスは、裸のまま金のロッドを探していた。置いたはずの場所にない。
違う場所に置いたのかもしれないと、あまり気に留めなかったベアトリスは次にアイニャを探し始めた。きっと待ちくたびれているから遊んであげなくては。
「アイニャ?」
お気に入りの布の中にも、ふわふわベッドの下にも、ベアトリスの服の下にもいない。ベアトリスは首を傾げる。
「狩りに出かけたのかしら?でも今日はお昼にも出かけていたのに」
ベアトリスは部屋の扉が半開きになっていることに気がついた。アイニャは重い扉を開けることができない。
そしてアイニャは、ベアトリスに挨拶をせずに出かけることはない。
(まさか、誰か来たのかしら)