可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「もしかして魔王様のところにお邪魔していませんか?」
「君の使い魔はよく私のツノに語り掛けて呼び出しにくるが、今日は来ていないよ」
魔王様のツノは声を拾うらしい。ツノにそんな素晴らしい能力があるなんて知らなかった。ベアトリスはジンの前に跪いて、胸の前で両手を組み合わせて懇願した。
「お願いします魔王様、そのツノでアイニャの声を探してはもらえませんか?」
丁寧に跪き、必死に潤んだクリスタルブルーの瞳におねだりされると、ジンの尖った耳がピクピクと反応した。
跪いて上目遣いする潤んだ瞳は、ジンのみぞおちをゾクッとさせる。ジンは真っ赤な瞳を細めてゆっくり頷いた。
「仲良くしている妻の頼みならやぶさかでないよ」
「ありがとうございます!魔王様!」
「だが、次に大声で走り回る時は、先に私の名前を呼ぶのが条件だ。
それが君の言う仲良くするということじゃないのかい?」