可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─

「ど、努力いたします?」

「そうしてくれ」


魔王様の要求の意図はわからなかった。だが、ベアトリスはどこを探せばいいのかわからない状態から、強力な助けを得て心から安堵した。こんな緊急時に助けを求められる人は、今までいなかった。


ベアトリスはジンが差し出した冷たい手に手を重ねて立ち上がった。


「君が走り回っていたおかげで、城内の声はだいたい聞き終わっているんだ。

おそらく使い魔は外だろうね」



手を繋いだまま魔王城の外に踏み出していくジンが語る。ジンのツノには広範囲の声を個々に拾う力がある。

特に「魔王様」のワードは受信している。

どこまで受信し、聞かないかも制御できるが、近ごろはベアトリスの声を自動受信していた。


盗聴し放題の能力だが、ジンが何度もベアトリスの前に現れたのは、ツノでアイニャが「魔王様」と呼ぶ声を拾ったからだったのだ。


< 75 / 232 >

この作品をシェア

pagetop