可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
エリアーナの顔は整っていて基本は可愛いはずだが、しかめっ面が酷く粗雑な印象を受ける。
「うちはアンタに仕える気なんてない。魔国民の誰もアンタを認めてへん。さっさと泣いてお家にお帰り?」
エリアーナの目的がイビリであることを理解したベアトリスは、蔑んでニヤつくエリアーナを押しのけて立ち上がった。
「私は絶対、泣きませんわ」
アイニャを抱っこしたベアトリスは、エリアーナに微笑みかけた。
ベアトリスは敬愛するおじい様に育てられ、おじい様直伝の処世術を駆使して今まで一人で強く生き抜いてきた。
ベアトリスは愛するおじい様の言いつけをきちんと守る。
「人間のくせに人間のくせにちょっと可愛いその顔、絶対歪ませたるからな!!」
悪態をつくエリアーナの前でベアトリスは堂々と胸を張った。顎を引いて背筋を伸ばし、おじい様直伝の啖呵を切った。
『いいかいベアトリス。
お前を攻撃する奴らにはこう言ってやるといい』
「あら、可愛くてごめんあそばせ!」
ベアトリスはほほほと上品に笑って、エリアーナを追い返した。