可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─


エリアーナはあの時アイニャがジッと階下を見つめていた姿を思い出す。エリアーナの反応が鈍ったことにサイラスだけが気づいた。



「私の当初の命令の元にやったことだ。今回は不問にする」



エリアーナは魔国民総出でベアトリスを泣かせという、ジンの意向に従って行動していた。ジンはサイラスにも目配せする。



「でも、これからは違う。どのような形でもベアトリスに害を加えることは、魔王ジンが一切許さない」



アホのエリアーナに知恵を与えていたのが誰かなんて見え見えだ。ジンのするどい眼光にサイラスは肩を竦めた。


ジンは立ち上がって、エリアーナのうさ耳を両耳をひとまとめにギュっと片手で握った。



「ひゃぁ!」



エリアーナはへなへな力が抜けてしまう。ジンが真っ赤な冷たい瞳でへなへなのエリアーナを睨みつける。



「次はないよ。わかったね、エリアーナ」

「ふぁい、まおうしゃま」



ジンがエリアーナの耳が千切れるほど強く握ってから、手を離すとエリアーナはくったり地面に寝転がった。



「サイラス、国中にベアトリスを泣かすな命令を正式に通達しておいてくれ」

「了承した」

「あと、エリアーナを片づけてから、君には頼みたいことがあるんだ」



くったり床に倒れるエリアーナの耳を優しく撫でて、サイラスは首を傾げた。


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