可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
脅迫(プロポーズ)する魔王様
魔王城のほど近くに作ったアイニャの小さな墓の前で、ベアトリスは膝を抱えて座り込んでいた。墓の中のアイニャに声をかける。
「アイニャ、そっちはどう?おじい様には会えたかしら」
ベアトリスの愛した二人が、死の向こう側で出会っていると思うとベアトリスの心は幾分か楽になった。
「アイニャが逝ってしまった日から、金のロッドも見つからないの。
私、大事なものを全部失くしてしまったわ」
また涙が喉を突き上がる感触がしたが、ぐっと飲みこむ。泣いてもいい環境をジンに与えてもらった。
だが、いつまでも泣き暮らしたりはしない。
愛した二人が、ベアトリスの泣き顔を望まないことをよく知っているからだ。
「でもね、アイニャ。私、新しく大事なものが」
続きを話そうとすると、背後から声が降って来た。
「今日は泣かないのかい?」
「魔王様!?どうして、突然現れますの?」
墓の前に座り込んでいたベアトリスの背後に、突然ジンが現れる。いつどうやって現れているのか、ベアトリスにはまるでわからないが魔術なのだろう。
「このツノは君の声を拾って仕方ないんだ」