可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
ジンは腰を屈めてベアトリスを覗き込み、金色の波髪を一房掴んでくるくると指に絡めて笑った。
ツノでベアトリスの声を盗聴して飛んできたらしい。
こんなに色んな魔術が使えるというのに、治癒だけはできないなんて不便な種族である。
「魔王様に隠し事はできませんわね」
「そういうことだよ。私の妻になった限りは、隠れて泣こうだなんて卑怯なことは諦めた方が良い」
「お優しい旦那様ですわ」
「君は『優しくすると泣く』と知ってしまったからね。もう意地悪なんて愚策は犯さないよ」
ジンはベアトリスの隣に座り、ベアトリスの頭を優しく抱き寄せる。
ベアトリスはその温度の低い手に拒否などまるでなく、引き寄せられるままにジンの肩に頭を着地させる。
その甘やかす冷たい手から、あの夜にもらったジンの気持ちが伝わってくる。
『君を、愛してしまった』