可愛くて、ごめんあそばせ?─離婚予定の生贄姫は冷酷魔王様から溺愛を勝ち取ってしまいましたわ!─
「私も魔王様を、愛してしまいましたわ」
ベアトリスがクリスタルブルーの瞳を細めると、愛を伝え合う嬉しさのあまりに一粒の綺麗な涙が落ちた。
「だからもう離婚なんて、絶対に受け入れてあげませんわ!」
ベアトリスは涙をこぼしながら、アイニャにだけ見せてきた柔和な笑顔をジンに魅せつけた。ジンは欲しかった返事に満足して頷いた。
「君は笑っていても泣いていても本当に、美しい」
ジンはもうこの生贄姫にすっかり魅了され、囚われてしまった。
ベアトリスの手を取ったジンは、左手の薬指にある古臭い指輪にキスをした。
「ベアトリス、魔国の正式な王妃になって欲しい」
ベアトリスは薄青い瞳を大きく見開いた。ジンは真っ赤な瞳をまっすぐに、ベアトリスへの願いを述べる。
「生贄姫が魔国の王妃になるなんて、前代未聞だよ。
君はあらゆる方面からの厳しい批判にさらされ、殺されるような危険な目に合うはずだ。
魔王の妻なんて、決して楽しいものではないだろうね」