不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 激甘で評判の悪い自動販売機の紅茶を求めて、建物の外に出た和香はそれを見た。

 立派なガタイをスーツに収めた羽積だ。

 胸からゲスト用のIDカードらしきものを下げている。

 こちらに気づかず、和香の同期の男性社員、辻井(つじい)と話しながら行ってしまった。

 羽積さん、ガードマンか、土木工事の人か、バンドマンではなかったのか。

 三階の奥さんがいつもそう言っているのにっ。

 まあ、どのみち、それは表向きの仕事なのだろうが……、
と思いながら、和香は羽積の背を見送る。




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