不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 


「辻井くん」

 そのあと、渡り廊下で、たまたま辻井を見かけたので、捕まえ訊いてみた。

「あー、羽積さんね。
 新しい営業の人だよ」

 コピー機の会社の人だと言う。

「なんだ、和香っ。
 さっそく、羽積さんに目をつけたのかっ」
と笑われる。

「無理無理。
 あんな感じのいいイケメン、彼女いるに決まってるだろ」

「そんなんじゃないよ。
 知ってる人に似てたから気になって訊いてみただけ――」
と言ってみたのだが。

 またまた~、と言う辻井は、
「まあ、和香の頼みならしょうがないな~」
と言い出した。

 いや……、まだ、なにも頼んでないんだが。
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