不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 


 仕事帰り、耀は和香のアパートに向かった。

 羽積という男のことが気になっていたからだ。

 下の道から見上げていると、和香の部屋に灯りがともっているのが見えた。

 だが、チャイムを鳴らす勇気はない。

 和香の部屋の右隣も左隣も真っ暗だったので。

 どちらが羽積の部屋かは知らないが、どちらにしても、いないか、寝ているかなのだろう。

 ……それにしても、こんなところまで、なにも言わずに来たりして。

 まるで、熱烈に和香を好きな男みたいだな、
と自分で思いながら、帰ろうとしたとき、誰かがアパートの階段を上がっていくのが見えた。

 女のようだ。
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