不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 音を立てずに階段を上ろうとした。

 すると、かなりスローになる。

 やはり、先ほどの彼女のように無音で上がっていくのは無理だ、と思いながら、足元に注意して上がりきったとき、彼女がこちらを見ているのに気がついた。

 しまったっ。
 足音を出さないようにして、アパートの階段を上がるとか、俺の方が不審者ではっ?

 通報されたらどうしようっ、と思ったとき、彼女が言った。

「神森耀さんですね」

「えっ?」
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