不埒な上司と一夜で恋は生まれません
自堕落な猫と白いマイホーム
ピンポンと耀は和香の家のチャイムを鳴らしてみた。
「はい」
とすぐに返事がある。
「俺だ。
突然訪ねてきたんだから、ドアは開けなくていいぞ」
と言う間もなく、和香はドアを開けていた。
「あっ、すみません。
私、すっぴんなうえに、自堕落な格好してました」
……いや、開ける前に気づけ、と思いながらも、耀は言う。
「大丈夫だ。
お前の自堕落なところなら、もう見飽きている」
ははは、と和香は笑ったあとで、
「で、こんな時間にどうされたんですか?」
と訊いてきた。
「いや、今、ここでお前のお姉さんと少し話してな」
「えっ?
姉がここに来てたんですか?」
和香は不思議そうに言う。
「ああ、もう帰られたが、この家の前に立ってらしたんだ。
……その、たまたま、俺がこの前を通ったとき、お見かけしてな」
と耀は苦しい言い訳をした。
そうですか、と言う和香は、耀の言い訳ではなく、別の部分が引っかかっているようだった。