不埒な上司と一夜で恋は生まれません
「いろいろな技術を叩き込まれたので。
 さりげなく、今の会社を傾かせるくらいはできますよ」

「……傾かせるな。
 俺もいるんだぞ」

 お前と暮らすはずのマイホームのローンが払えなくなるじゃないか、と耀は思う。

 まあ、建てたときには、和香と暮らす想定はなかったのだが。

 今となっては、図書館前のあの白い家は、和香と休日、図書館で借りてきた本を読んでゆっくりしたり。

 和香がひだまりの猫のように、本を読みながら、うとうと寝るための家なのだ。

 なんとしても、手放したくない、と思っている。
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