不埒な上司と一夜で恋は生まれません
白い家 春
和香が耀の家で暮らしはじめて数日した頃。
二人は気分転換に、和香が住んでいたアパート近くのスーパーに行ってみた。
「いつもと違うところに行くと、やっぱり新鮮ですね」
そう言いながら和香が、今が夜だと忘れそうなくらい明るく広い店内を眺めていると、耀が、
「前は、ここ、よく来てたんじゃないのか?」
と訊いてくる。
「そうなんですけど。
でも、もうなんだかすごく懐かしい感じがします。
さっき、アパートの前を車で通ったときも。
今は、私の部屋にも羽積さんの部屋にも、もう違う人が住んでるんだなと思って。
なにかこう、不思議な感じがしました。
アパートの外観も、すぐ家出する猫が塀の上で寝てるのも変わりないのに」