不埒な上司と一夜で恋は生まれません
「羽積か。
 もう会うこともないんだろうな」

「そうですね。
 公安の方ですし。

 痕跡も追えないでしょうしね
 今度会うときは、名前も違うかも」

 しんみり和香がそう言ったとき、
「あらー、和香ちゃーん」
と声がした。

 振り返ると、買い物カゴを手に持った三階の主婦、富美加(ふみか)がやってくるところだった。

「やだもう、久しぶり~っ。
 いきなり引っ越しちゃうんだもん。

 羽積さんもいなくなっちゃったし。
 なんか一気に寂しくなっちゃったわよ~」
と言いながら、富美加はニコニコ、耀に頭を下げている。
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