不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 

 家に帰った和香がリビングに持ってきたスーツケースの中をゴソゴソやっていると、耀が嫌そうに言ってきた。

「まだ自分の荷物をそれに詰めてるのか。
 またいつか出て行ってしまいそうだからやめろ」

「はあ。
 単に移動に便利だから詰めたままにしてるだけなんですけどね。

 洋服なんかはクローゼットにかけてますし。

 これは単に、ちょっとした日用品なんかを入れてるだけで。

 いや~、荷物、引っ越すたびに減らしてってはいるんですけどね」

 なかなか減らないですよね、と和香は笑いながら、スーツケースの中の物を出していた。

 その手元を耀が覗いている。
< 415 / 438 >

この作品をシェア

pagetop