不埒な上司と一夜で恋は生まれません
 

 和香は結局、会社に派遣社員として戻っていた。

 家の前を散歩していた専務にスカウトされたのだと言う。

「君、私に会社を発展させろとか言って。
 自分は毎日、呑気に庭を掃いたり図書館行ったりしてるのは変じゃないかね」
と言われたらしい。

 それで和香は会社が提携している派遣会社に入り、また同じ職場に戻ってきたのだ。

 ところで、最近は、専務や常務も社食に来て、普通にみんなと昼食をとったりするようになったのだが。

 今日は耀と和香たちのいるテーブルに専務もいた。

「ほう。
 神森課長のお母様はマッサージもお得意なのかね。

 何度かお会いしたが、神森課長に似て、お美しい人ですよね」
と語る専務に、和香が、

「私、最近、嫁としてお母様直伝のマッサージを伝授されまして。
 免許皆伝いただいたんです」
と話すのを耀は眺めながら思っていた。
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