不埒な上司と一夜で恋は生まれません
白い家 初秋
「課長ー。
戸締まり、終わりました?」
「忘れ物はないか? 和香」
耀の仕事がようやく落ち着いて、新婚旅行に行く長期の休みがとれたのだ。
ガラガラとスーツケースを引きながら、玄関を出る。
「あ、やっぱり、ちょっと気になる」
と和香は玄関扉を開けようとしたが、オートロックなので、もう閉まってしまっていた。
思わず、ガチャガチャノブを引っ張ってしまう和香に耀が、
「鍵開けて入れ」
と呆れたように言う。
「オートロックはたまに不便ですけど。
指紋認証は楽ですよね」
はは、と笑いながら、和香は一度中に入り、もう一度、エアコンを確認する。
今日から、サントリーニ島に向かい、旅立つのだ。