どんな恋でも繋いでみせます!
「填本」



全く頭に入らない文章をただ黙読していると、千崎くんがふいに私の名前を呼ぶ。



「そこにいたら扇風機の風当たらなくないか?もうちょいこっち来いよ」



こめかみをつたう汗がキラキラと輝いていて、千崎くんが扇風機になったかのような涼しい顔を向けてくる。

私のことはその辺で高く積まれた本みたいなオブジェと思ってくれればいいのに、やっぱり千崎くんは優しいから気を配ってくれる。

そんなところも好きで仕方がない。



「大丈夫、近くにいたら飛び火で巻き添い食らう気がするから」

「俺が填本に怒ることなんて100パーないから安心しろよ」



声を出して笑いながら私との距離を詰めると、躊躇なく私の腕を掴んでイスから立ち上がらせ、千崎くんたちの近くの席に座らせられる。

握られた腕から火照っていくのを感じた。

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