どんな恋でも繋いでみせます!
「───填本?」
早く扉を開けないと、と走る気持ちに待ったをかけるように、扉の向こうから千崎くんの声が聞こえた。
静かに息を呑み、足元を見つめていた顔を上げる。
「なんで入らないの?」
決して大きい声ではないけど、ここは静かすぎて扉を隔てていてもちゃんと耳に届いてしまう。
千崎くんの声だけで、戸惑っているのだと顔を見なくてもわかる。
恐らく、中々来ない私を心配して教室に戻ろうとした時、扉の窓に映る人影に気づいて、それが私以外考えられないから声をかけたのだろう。
扉の小さな曇りガラスからでは千崎くんの顔はよく見えない。
何も言わない私に痺れを切らして、千崎くんのシルエットが動きを見せる。
千崎くんが徐々に扉に近づいて来て、反対側のドアノブに手をかける気配がして、私は咄嗟に声を上げた。
「───待って!」