どんな恋でも繋いでみせます!
「目覚めた時、その女子の声とか、顔とか、どんな髪型してたとか、全く思い出せなくて……ただ、その言葉と体操服に刺繍された名前だけは憶えてた」



保健室はやけに静かだった。
この場所だけ切り取られたみたいに、別空間にいるような錯覚を感じる。

だけど、グラウンドから真っ直ぐ伸びたホイッスル音が聞こえて、同じ空間にいるのだと意識が戻ってくる。



「その名前が、柏木だった」



上履きを履いて、ベットから立ち上がると、ギシッと音が小さく鳴る。



「いつかお礼言いたくて、あわよくば仲良くなれたらいいな、って思った。でも、女子に話しかけるの慣れてないからなかなか話しかけられなくて、だから填本に恋のキューピットお願いしたんだ」



カーテンに影を作る千崎くんのシルエットを目でなぞる。


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