どんな恋でも繋いでみせます!
「填本、今日も放課後いい?」
クラスメイトと騒いでいる倫太郎くんの影に隠れ、千崎くんが顔を近づけ耳打ちしてくる。
驚いて勢いよく首を捻り、千崎くんを見る。
すぐそこに千崎くんの顔があって心臓が大きく跳ねた。
「これからについて話したいから、昨日と同じとこで」
「……」
「填本?どうした?用事ある?」
「あっ、いや、ううん、わかった。授業終わったら旧図書室ね」
いけない、意識がどっか飛んでいってた……。
意識を取り戻し慌てて返事すると、千崎くんはあからさまに顔を綻ばせて、親指を突きあげグーサインを出した。
「悪いな、よろしく、恋のキューピットさん」
今まで私のことを恋のキューピットって呼ぶ時のみんなは、上機嫌で、恋をしてキラキラ眩しくて、私自身もそう呼ばれることが嬉しかった。
キューピットって響きも可愛いし。
だけど、これほどまでに呼ばれて苦しい相手はいない。
ごめん、千崎くん。
昨日は恋のキューピット引き受けるって言っちゃったけど、やっぱり私にはムリだ。
千崎くんに恋している私には、誠心誠意千崎くんの恋を応援できないと思うの。
だから、今日の放課後、土下座してでも断ろう。
"ただのクラスメイト"の関係に戻ることを、どうか許して欲しい。
私は、倫太郎くんの後を追う千崎くんの背中を見つめながら、肩にかけたスクールバッグの持ち手をギュッと強く握り直した。