どんな恋でも繋いでみせます!
「俺、同級生であのアーティストを好きだって言う奴初めて出会った!」

「……え?」



その時、タイミング悪く授業が始まるチャイムが鳴る。



「やばっ、急いで戻ろう」



聞き返す前に、千崎くんが大きい手で私の背中を押して、私たちは担当教師が来るギリギリで教室に飛びこんだ。

「トイレ長かったじゃん、てかなんで千崎と一緒?」と前の席の紗良が身体を反って聞いてくるから「少し話してただけ」と間髪入れずに答えると、疑わしき目で「ふーん」と返され冷や汗が出た。

そっと千崎くんのほうを盗み見ると、千崎くんも同様に近くの席の友達から「遅かったじゃん」と言われていた。


その時、私の視線を感じたのか、千崎くんがふいっとこっちを見る。

ドクン、と正直に心臓が大きく跳ねた。


逸らすべきか、いやでもここで逸らしたら感じ悪いだろうな、と脳内をてんやわんやさせていると、千崎くんはまたさっきのクシャクシャな笑顔で肩を竦め笑いかけてきた。

手のひらを横に滑らせ空気を切るような手振りで「セーフ」と口パクで言っている。


チャイム鳴り終わった後に教室に入ったのだから、正確に言えばアウトだけど、千崎くんは教室にまだ先生が来てないならセーフという緩い認識をしていた。

それに思わず、私も笑ってしまった。


今この瞬間だけは、千崎くんが紗良を好きだということを忘れていたと思う。



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