「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 ヘルマンの隠れ家という屋敷では、カヨと別々の部屋になった。

 エドムンドが、「二階にあるいくつかの部屋のどれを使ってもいい」と言ってくれたからだ。

 カヨは、当たり前のようにおれとは違う部屋を選んだ。

 部屋を選んだのは、どちらが先だっただろうか? たしかおれが先で、彼女がその後に違う部屋を選んだはずだ。

 あんなことがあったから、彼女がそうするのは当たり前だ。それはわかっている。だが、一応夫婦なのだから、打診をしてほしかった。

 そうか。おれたちは夫婦を偽っているわけだから、彼女が打診をする必要はないわけで……。

 それでもやはり、おれに一言尋ねて欲しかった。

 もっとも、尋ねられて「同じ部屋にしよう」などとは答えられないが。
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