「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 思い立ったら即行動のわたしが、これほど迷うなんて。

 まったくもう。クストディオのせいだわ。

 イライラともやもやが半端ない。

 嫌いな相手にかまわれてもきっと迷惑なだけ、という思いと、それでもやはり彼に寄り添った方がいいのではいか、という考えがせめぎ合っている。

 それで、彼はいまなにをしているのかしら?

 このわたしが彼のことで悩んでいるというのに、その当人はなにをしているの?

 もしかして、寝台で高いびきとか? それとも、呑気に読書の続きを楽しんでいるとか、ボーッとしているとか?

 想像すると、自分自身がバカバカしく思えてきた。

 そうよね。結局、こういうのって独りよがりにすぎない。

 いまさらクストディオに寄り添ったところで、彼にすれば「はあ?」ってことになるでしょうし。

 もうこのことは忘れて貴重な夜のひとときをわたし自身の為に使おう。

 それこそ、夕方まで読んでいた謀略物の書物の続きを読むべきだわ。
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