「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「はああああーっ」

 階段上で立ち止まったと同時に大きな溜息が出た。

 なんだかんだと推察をしているが、というか言い訳を連ねているが、結局のところおれに勇気がなかったからだ。

 堂々とカヨを「おれの愛する人だ」と宣言する勇気がなかったからだ。

 なにもおれの彼女に対する想いが中途半端とか足りないというわけではけっしてない。

 だが、だれにも認められるだけの力があるかというと、いまはまだあるとは言いきれない。

 いやいや、ダメだ。力がなければ努力すればいい。強い想いがあれば、あとは自分次第。

 もちろん、カヨしだいでもあるが。

 もしも彼女がエドムンドかフェリペを愛していると言えば?

(どうする、おれ?)

 頭をおもいきり左右に振った。

 弱気になるな。仮定を論じてもきりがない。

 とにかく彼女に想われる男になればいいだけのこと。

 それがすべてだ。

 決意すると表情をあらためた。

 そして、おれの部屋へ戻った。
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