「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「いやだわ。ごめんなさい。まさか真面目に受け止められるとは思わなかったの」
「フンッ」

 エドムンドに謝罪した瞬間、肩を並べているクストディオが鼻を鳴らした。

「ちょっと、なによ? なにが『フンッ』なのよ?」

 腹が立った。関係のない彼に鼻を鳴らされる筋合いはない。

「重要な密会の前にくだらないことを言うからだ」
「みんなが緊張しているから、それをやわらげようとしただけよ。わたしの意図も察せず、そんなことをよく言うわね。ああ、そうね。あなたは完璧だから、緊張も不安もないわよね。それはどうも申し訳ありませんでした」

 いやだわ、わたし。

 素直に「ごめん」、とだけ言えばいいのに。それなのに、口から飛び出すのは嫌味ばかり。
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