「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「こちらは、妻のカヨです」

 クストディオが紹介してくれた。

 これで「愚妻の」とでもつけていたら、あとでぶっ飛ばしたかもしれない。

「宰相閣下、はじめまして。クストディオの愚妻のカヨです。このような恰好でお許しください」

 ドレスだったら裾を持ち上げて挨拶するところだけれど、なにせいまは乗馬服姿。腰をわずかに落として詫びておいた。

 正装姿の宰相への詫び、である。

「いや。なかなかに……、お美しいレディですな」

 宰相は、渋い美貌に苦笑を浮かべた。

(というか、いま、間がなかった? 「お美しい」の前、たしかに間があったわよね?)

 ったくもうっ、社交辞令はいいのよ。
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