「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「これは驚いた。まさかこれほどはっきりと問題を投げかけてくるとは。わが甥っ子どもより、よほど胆力があるようだ」

 が、驚いていたのはほんのわずか。

 宰相の渋い美貌に不敵な笑みが浮かんだ。

「若い、というのはいいものだ」

 喉の奥から絞り出すような笑い方をした後、彼は豹変した。

 豹変という言葉は、いまこのときの彼のことを指すのだというほどピッタリなほど、彼の態度が一変した。

「だが、バカだ。このわたしをなめきっている。いいか、若造。よくきけ」

 宰相は、テーブル上に両手を叩きつけると上半身を乗りだしてきた。それこそ、テーブル越しにクストディオの胸倉をつかんできそうな勢いである。

 その大きな物音に気がついた他の客たちは、驚いてこちらに視線を向いた。が、強面紳士たちがすかさず睨みつけると、みんな慌てて他所を向いてしまう。
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