「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「閣下。お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。おたがいに歩み寄れず、残念です。カヨ」

 宰相の渋い美貌に、ちらりと視線を走らせた。

 彼は、力いっぱい渋面を作っている。

「閣下、失礼いたします」

 クストディオと一礼し、宰相に背を向けたと同時に彼が腕を差し出してきた。

 その腕に自分のそれを絡め、同時に歩きだした。

 エドムンドとフェリペが、わたしたちのあとに続く。

 いま、宰相の頭の中には、「あの方」のことでいっぱいになっているはず。

 そうして、わたしたちは優雅にカフェを出て行った。
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