「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「クスト様。遺言のことを知っているわずかな人物たちは、一枚岩ではありません。宰相の妹である王妃。いまは摂政を務めている王弟。どちらも宰相に不平不満があるはずです。遺言の内容をきかされているであろう、ヘルマンをのぞく王子たちも同様です。クズばかりですが、クズなりに野心があったり欲が深かったりします。しかも、王子どうしも仲がよくありません。第二王子がまだマシなので、宰相は第二王子を国王に推すでしょう。当然、第一、第三王子は面白くありません。とくに第一王子は、『おれをさしおいて』と、ことあるごとに宰相や第二王子に噛みついています。つまり、いつだれが宰相を裏切ってもおかしくない状況なのです」
「それならば、『あんたたちで勝手につぶし合ってくれ』と言いたいところだな」

 クストディオが言い、こちらを向いた。

「ここまできて、そのようなわけにはいかないよな」

 視線が合うと、彼はわたしが口を開く前に苦笑しながら続けた。
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