「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 怒り心頭、とはこのことだわ。

 気がついたら、クストディオの胸倉をつかんで彼を揺さぶっていた。

「いや、あれはきみの元婚約者がおバカだからだ。そうではない。過去はいいじゃないか。いまは、第一王子だ。だろう? 彼も大差ないだろうが、すくなくともそこそこの器量と性格のレディしか興味はないさ。なあ、エド?」
「は? あ、いえ、そ、そうかもしれません……」

 クストディオに話を振られたエドムンドは、傷のある顔を真っ赤にしてしどろもどろになっている。

「ガタン」

 そのとき、テーブル上で大きな音がしたので、わたしたちの体がビクンと震えた。
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