「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 レッグホルスターとともにナイフを手渡されたカヨは、それをすぐさま足首よりすこし上のあたりに装着した。乗馬用ズボンの裾をめくって装着する様を、おれたちはジッと凝視してしまっていた。

 おれたちというのは、当然エドムンドとフェリペとおれのことだ。

(まるで書物に出てくるレディの暗殺者のようだ)

 カッコいいというよりか、そのセクシーさにドキッとしてしまった。

 幼い頃からケンカばかりしている彼女に対して、たったそれだけの仕種でドギマギしてしまうなどとは……。自分でも驚きである。

 エドムンドとフェリペもまた、ドキッとしただろうか。

 彼らの様子をそっとうかがうと、彼らもこちらの様子をうかがっていた。視線が合うと、火花を散らすのではなく気まずさでそれをそらせた。
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