「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

もしかして、わたしって心臓が悪いのかしら?

「クスト、ずいぶんとがんばっているのね。それに、いつの間にか二人と仲良くなって」

 クストディオの背中に呼びかけた。

(彼の背中ってこんなに大きくて広かったかしら?)

 いまさらだけど、彼の背中の大きさに驚いてしまった。

「ああ。エドムンドとフェリペは、剣が達者らしい。きみも知っての通り、おれのは我流だ。素振りも型も剣を力任せに振りまわしているにすぎない。教えを乞うたら、快く教えてくれると言ってくれた」

 彼は、体ごとこちらに振り返った。

 陽光をバックに光り輝く彼を見た瞬間、心臓が大きく飛び跳ねた。

(い、いまのはいったいなに? もしかして、わたしって心臓に疾患でもあるのかしら?)

 焦ってしまった。
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