「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~

わたしは足手まとい

(なんてことなの)

 絶句してしまった。というよりか、絶句するしかなかった。

 クストディオの料理の手際のよさ。うちの料理人たちよりはるかにいいのである。

 しばらくの間、ただ茫然と彼を見ていた。


「キャッ!」

 厨房の床で盛大な音がした。

 ボウルを落としてしまったのである。もちろん、落としたのはわたし。

 クストディオに指示され、ドレッシングを作るのにオリーブオイルと酢と塩と黒コショウを混ぜようとして手が滑ってしまった。
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