「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「あららら……」

 厨房の床にオリーブオイルが散乱してしまった。だから、床上は艶々している。

「ごめんなさい。すぐに拭くわ」

 モップよね。

 厨房を出て掃除用具がしまわれていそうな所を、片っ端から開けてみる。

 が、どこにもない。扉を開けた向こうは、ほとんどが普通の部屋である。

 途方に暮れつつ歩いていると、階下、つまり地下室へと続く階段が目に留まった。

「もしかして、地下室に?」

 掃除用具なら、充分考えられる。

「間違いないわ」

 なぜかそう確信し、段に足をおろした瞬間……。
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