「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「ぎゃあああああっ」

 つるりと滑った。おそらく、オリーブオイルが靴の裏に付着していて、いまこのタイミングでその効果を発揮したのだ。

 自分の可愛らしい悲鳴をききつつ、軽快な感じで階段を転がっていく。

「イタタタタ」

 あっという間だった。さほど段数がなかったから、そこはよかったのかもしれない。

「カヨッ、どうした?」

 頭上から声がふってきたので見上げると、クストディオが立っている。

 廊下に設置している灯火の淡い光を受け、前掛け姿の彼が浮かびあがっている。

 その姿は、ムカつくほど可愛い。
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