「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「大丈夫か?」

 彼はすぐに階段を降りてくると、わたしを抱え起こしてくれた。

 その距離の近さに、またしても心臓が大きく飛び跳ねた。

「え、ええ」
「いったい、どうしたんだ?」
「モップを探していたのよ。どこにも見当たらないから、もしかして地下室にあるかもしれないと。いざ階段をおりようとした瞬間、足を滑らせたわけ」
「まったくもう。きみはもうなにもせず、居間でくつろいでいてくれ」

 ショックだわ。クストディオに邪魔者扱いされてしまった。
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