「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
 が、背が伸び始めるとあっという間に追い越されてしまった。

 いまではずいぶんと背が高く、筋肉質になっている。

 だけど、いまだに子どものときの彼のイメージがある。それは、忘れてはならない大切なもののようにけっして色褪せないし、塗り替えられることもない。

 もしかすると、しあわせだったあの頃を忘れたくないのかもしれない。だから、あの頃の彼のイメージから離れられないのかもしれない。

「カヨ、どこか傷まないか?」

 クストディオは階段をのぼり終え、廊下を居間に向って歩き続けた。

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