「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
「あー、おかえり」

 永遠とも思える沈黙の後、クストディオが咳払いとともに言った。

「た、ただいま戻りました」

 しばしの間を置き、エドムンドが応じた。フェリペは、その隣でコクコクと可愛い顔を上下させている。

「お客人の正体をきく前に、このことを説明させてくれ。いいね?」

 クストディオが言った。

「このこと」というのは、いまのわたしたちの態勢に他ならない。

「カヨがモップを探していて、地下室へ階段をおりようとして足を滑らせたんだ。それで彼女を居間に運ぼうと……」
「カヨ様が? カヨ様、大丈夫なのですか?」
「カヨ様、大変だ」

 クストディオの説明が終わらない内に、エドムンドとフェリペが駆けよって来た。
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