「世紀の悪女」と名高い侯爵令嬢がクズ皇太子に尽くし続けた結果、理不尽にも婚約破棄されたのですべてを悟って今後は思うままに生きることにする~手始めに隣国で手腕を発揮してみるけど文句ある?~
(イヤだわ。どんどん話が大きくなっていく。階段で足を滑らせただけでこんなにチヤホヤされて……。だけど、すこしだけうれしいかも)

「大丈夫なの。エドもフェリペも心配しないで。クストが大げさにするものだから。ほんとうに大丈夫よ」

 こういうことって、いくら本人が「大丈夫」と言っても、心配させない為にそう言っていると受け止められてしまう。

「いまのところ、痛いところはないのよ」

 さらに言い募るも、三人とも信じていないみたい。

「肉があるからダメージはすくないはずだ。本人も大丈夫だと言っているしな」

 そのとき、三人目、つまり見ず知らずの美貌の青年がそう言いながら近づいて来た。
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